プリンセスの記憶と現代のジュエリー

子どもは限られた情報の中でも、自然に「プリンセス」に憧れます。煌びやかなドレスに身を包み、舞踏会で踊る姿を想像する。

最近、子どもがピアノを習い始めたのをきっかけに、私もショパンの楽譜を久しぶりに開きました。

「子犬のワルツ」を弾いてみると、和音の響きに宮廷音楽のような華やかさを感じ、頭にはディズニープリンセスがドレスを揺らして踊る姿が浮かんできました。

その体験から、私の中に問いが芽生えました。

大人になっても、ロココのプリンセスや豪華なジュエリーへの憧れを忘れていないのではないか?
その気持ちは、ジュエリー顧客の心理と関係があるのではないか?

目次

ロココの記憶とプリンセスの憧

18世紀のロココ時代、フリルとレース、パステルカラーに包まれたドレスや豪奢なジュエリーは、宮廷文化の象徴でした。ベルサイユ宮殿を初めて訪れた時は、その装飾の華やかさや宮廷文化に、やはり憧れににた感情が沸き起こった記憶があります。

その華やかさはフランス革命で断罪され、歴史的には終焉しましたが、人々の記憶からは完全に消えたわけではありません。

現代でも「プリンセスになりたい」という憧れは子どもたちの中に自然に芽生えます。
五歳の娘も、その道にはずれることなくいつかはプリンセスになる、と話しています。
そして大人になった私たち、宮廷文化の西洋からかけ離れたアジアにいる私たちも、その夢は心のどこかに潜み続けているのではないでしょうか。

革命後の時代とショパンの優雅さ

ショパンが生きたのは、宮廷文化が消え去った後の19世紀。華美な舞踏会ではなく、知的で洗練されたサロンが文化の中心でした。

彼の音楽はブルジョワの優雅さに寄り添いながらも、どこかに「失われた宮廷の残響」を漂わせています。だから私たちは彼の旋律を聴くと、現代的なサロンの知性と、ディズニープリンセス的な夢の両方を同時に感じ取るのかもしれません。

大人の心に残る憧れ

社会は民主化し、現代の生活はすっかりカジュアルに傾きました。それでも、大人の女性の心の奥に「プリンセスのドレス」や「豪奢なジュエリー」への憧れが残っていることは否定できません。

それは子どもの夢と同じでありながら、もっと複雑で深い――人生の中で忘れられない「華やかさの記憶」です。

現代に必要なジュエリーとは

では、現代の女性にとって必要なジュエリーとは何でしょうか。
ロココのように過剰な装飾ではなくても、ジュエリーは人の中に眠る憧れを呼び起こす役割を持っています。

現代にふさわしいジュエリーとは、日常に馴染みながらも、内に秘めた「憧れの記憶」をそっと映し出すものなのかもしれません。

現代女性の生き方と憧れ

ここで浮かぶ問いがあります。――「憧れをどう生きるか」

現代女性にとって良い生き方とは、華やかな夢を忘れ去ることではなく、それを心の奥に抱えながら、日常の中に小さく取り戻すことではないでしょうか。

ジュエリーを身につけることは、その方法のひとつ。
大げさな宮廷生活を再現するのではなく、ひとつの輝きで自分の中のプリンセスを呼び覚ます。
それが現代の装いに必要なジュエリーの本質の一つなのかもしれません。

まとめ

子どものプリンセスへの憧れ。ショパンを弾きながら思い浮かんだ宮廷の華やかさ。

それらは、大人になっても私たちの心に残り続ける「忘れられない夢」です。
世界中のだいたいの女性の憧れといえるでしょうか。

西洋のプリンセスのドレスとジュエリー。
その現代にも心に根付く西洋装飾文化への憧れを理解しつつ、より深く日本人の求めるジュエリーとは、を考えていきたいと思います。

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この記事を書いた人

ジュエリーデザイナー26年
ジュエリー職人4年 CAD1年
ジュエリーブランドディレクター10年
製作が好きで飛び込んだジュエリー業界で様々な経験を積みながら
品があるデザイン、上質といえる技術を模索。
”静寂なる輝き”を極める旅を続けています。

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