デザインを理解しない組織で、20年間デザイナーを続けてきた今

職人だった私が、物をつくる会社でデザイナー兼営業として入り、
デザイナーという職業がどの範囲までの仕事を行うべきなのか、
全く線引きがない世界で、デザイナーを続けること
かれこれ20年。

デザインした商品を販売する会社なのだから、
デザインは事業の中心にあり、デザイナーの専門性も尊重される。
職人あがりの私は、そんな希望すら持たないまま、
営業とデザインをこなし、繋がりのある工場で作り、納品する、
商品にまつわる全てを担うことで、
本当によい経験になることは、無意識にわかっていました。

デザインが、最初から最後までの商品設計を示しているとすると、
条件からアイデアを出すことは、若かりし私にとっては毎回これでいいのかな、
という確認作業のようなもので
何千何万というデザイン画を書いていくにつれ、
営業がもとめているもの
職人が悩まず作れるもの
売り先にいる顧客が喜ぶもの
その情報と感覚は日々蓄積されていきました。

そして、クオリティを上げたい、と思うほど
事務所での作業の環境ではストレスになるからこそ、
自宅での作業があたり前になっていきました。

それが、後には自分の首を絞めることになろうとは、、、。

目次

デザインは、最後に形を整える仕事なのか

何をつくるか。
誰に届けるか。
いくらで販売するか。

商品の大きな方向は営業によって決められ、
そのあとデザイナーが呼ばれる。
そして、「売れそうな形にしてほしい」「高級感を出してほしい」「今風に見せてほしい」と求められる。

ジュエリー業界のデザイン理解は、とてもレベルが低かったように、
今考えても思います。

デザインは事業の出発点ではなく、
すでに決まったものの見た目を整える仕事として扱われていました。

もちろん、与えられた条件のなかで最善の形を導き出すことも、
デザイナーの重要な仕事です。
しかし、本来のデザインは、もっと手前から始まるはずです。

  • そもそも、これは誰のための商品なのか
  • その人の生活に、どのような変化をもたらしたいのか
  • なぜ、ほかの会社ではなく自分たちがつくるのか
  • 何をつくり、何をつくらないのか
  • どのような価値を、長く残したいのか

こうした問いを立て、方向を考えることもデザインです。

ところが、その部分から切り離されたまま、
最後の造形だけを求められることが少なくありませんでした。

この原因としては、
宝飾そのものの、特性も起因していると思います。
本物の天然石、本物のダイヤモンド、本物の貴金属、
それと、粗悪品ではない、良品という保証。

それで、十分価値を見出し、購入する人がいる、
そんな業界だからです。

顧客は、デザインというよりは、石や素材価値にお金を払う。
そういう業界独自の特性が、
デザインの発展を阻害した一因である、
そうとも考えています。

専門的な判断が「好み」で覆される

もう一つ、長く感じてきたのは、
デザインの判断基準が組織のなかで共有されていないことでした。

顧客、ブランド、価格、使用場面、製造方法などを考え、理由を持って提案しても、
最後には専門外の人の「私は好きではない」「以前はこれが売れた」という感覚で方向が変わる。

もちろん、最終的な決定を経営側が行うこと自体は当然です。

問題は、何を基準に判断したのかが共有されず、
その判断が会社の知識やブランドの基準として蓄積されないことです。

判断基準がないまま担当者の好みが優先されれば、商品ごとに方向が変わります。
それでも結果が出なければ、デザイナーの能力や提案力の問題として処理される。

私は、その構造に長い間フラストレーションを感じてきました。

会社に答えがなかったから、自分で学んだ

会社のなかに明確な答えがなかったため、私は自分で学び始めました。

デザインとは何か。

ブランドとは何か。

なぜ、優れた商品をつくるだけではブランドにならないのか。

美的な判断は、経営や経済価値とどのようにつながるのか。

本やYOUTUBE、国内外のブランドのニュース、また実務のなかで試してきました。
商品単体ではなく、その背景にある思想、言葉、見せ方、
顧客が触れる体験までをつなげようとしてきました。

それは会社から与えられた役割というより、
「このままでは、ものづくりが成立しない」という違和感から始めたことでした。

そして、昨年デザインマネジメントという分野と出会い、
これまで培ってきたやり方や考え方が、
学問で説明されうることだったことを知りました。

自分の説明が足りないのだと思っていた

長い間、私は自分の伝え方が足りないのだと思っていました。

もっと経営の言葉で説明できれば。

もっと売上につながる提案ができれば。

いつか、デザインの価値を理解してもらえるのではないか。

だから私は、デザイナーとしての技術だけでなく、
ブランド、経営、マーケティング、デザインマネジメントについても学ぼうとしてきました。

しかし、学びを重ねるなかで、別の問いが生まれました。

これは、一人のデザイナーの能力や、一つの会社の人間関係だけの問題なのだろうか。

デザインを売りにし、社内にデザイナーを抱え、ブランドを強くしたいと話しながら、
デザインを経営資源として扱っていない企業は、決して一社だけではないのではないか。

そして、この構造をデザイナー個人の努力だけで変えることは、本当に可能なのだろうか。

20年間の違和感を、個人の不満で終わらせないために

この記事で書きたいのは、
「自分のデザインが評価されなかった」という個人的な不満ではありません。

物をつくる会社が、デザインをどのように位置づけているのか。

デザイナーに何を期待し、そのためにどのような情報や権限を与えているのか。

ブランドを育てると言いながら、短期的な売上や効率だけで判断していないか。

20年以上抱えてきた違和感を言葉にすると、
それは個人の評価ではなく、組織と経営の構造に関する問いへ変わっていきました。

次の記事では、デザインを売る会社が、
なぜ社内にあるデザインの価値を評価できないのかについて考えます。

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この記事を書いた人

ジュエリーデザイナー26年
ジュエリー職人4年 CAD1年
ジュエリーブランドディレクター10年
製作が好きで飛び込んだジュエリー業界で様々な経験を積みながら
品があるデザイン、上質といえる技術を模索。
”静寂なる輝き”を極める旅を続けています。

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