Designing for Sensibility|感受性をひらく学び #03_違和感を大切にするということ

違和感を大切にすると、問いが深まるヒントが見つかる

今回は、学びの中で最も大きな気づきの一つであった、「違和感」がテーマです。
違和感を感じることは、一見マイナスのような印象を持ちますが、
デザインや、社会を考える上で、
自身の違和感に繊細なアンテナで気づくことができる力は、
非常に役に立ちます。

目次

違和感は、ただの不満ではない

TCLで学んだ、深層心理と問いの関係

TCLで学んだことのひとつに、
違和感を大切にするという姿勢があります。

日常の中で、私たちはさまざまな違和感を覚えます。

なぜか心がざわつく。
なんとなく納得できない。
うまく言葉にできないけれど、引っかかる。
表面的には問題がないように見えるのに、どこか苦しい。
みんなは普通に受け入れているけれど、自分にはしっくりこない。
何かがひっかかる。

こうした違和感は、つい見過ごされがちです。

「気にしすぎかもしれない」
「自分がわがままなのかもしれない」
「今は考えても仕方がない」
「みんなが大丈夫なら、自分も受け入れるべきなのかもしれない」

そうして、違和感をなかったことにしてしまうことがあります。

けれど、違和感は単なる不満ではありません。
自分の内側にある感受性が、何かを受け取っているサインだと学びました。

その違和感の奥には、自分が本当に大切にしている価値観や、
まだ言葉になっていない問いが隠れていることがあります。

違和感は、深層心理とつながっている

違和感は、頭で考えるよりも先に、身体や心が反応している感覚です。

理由ははっきりわからない。
でも、何かが違うと感じる。
言葉にする前に、心が少し止まる。
身体がこわばる。
胸の奥に小さな抵抗が生まれる。

そうした反応は、自分の深い部分から出てきていることがあります。

たとえば、ある言葉を聞いたときに、なぜか苦しくなる。
ある空間にいると、自分らしくいられない。
ある考え方に触れると、心が反発する。
ある選択をしようとすると、どうしても足が止まる。

それは単なる気分ではなく、
自分の深層心理が「そこには何か大切なことがある」と知らせているのかもしれません。

違和感は、自分の奥にある価値観、傷ついた経験、守りたい感覚、まだ認めきれていない願いとつながっていることがあります。

だからこそ、違和感を雑に扱わないことが大切なのです。

違和感を押し込めると、自分の感覚が見えなくなる

社会の中で生きていると、自分の違和感をそのまま表現できない場面があります。

仕事だから。
組織だから。
空気を読まなければいけないから。
相手との関係を壊したくないから。
自分だけが違うことを言うのが怖いから。

そうして、違和感を飲み込むことは誰にでもあります。

けれど、それを繰り返しすぎると、自分の感覚が少しずつ見えなくなっていきます。

本当は嫌だったのか。
本当は納得していなかったのか。
本当は傷ついていたのか。
本当は別の選択をしたかったのか。

それすら、わからなくなってしまうことがあります。

違和感を無視し続けることは、自分の感受性を閉じることでもあります。

そして感受性を閉じてしまうと、自分が何を美しいと思い、何を大切にしたいのかも、だんだん見えにくくなってしまうのです。

違和感は、問いの種になる

TCLでの学びを通して、私は違和感をただの感情で終わらせず、
問いの種として見つめることの大切さを感じました。

違和感を覚えたとき、すぐに答えを出す必要はありません。

なぜ、私はこれに引っかかったのか。
この違和感は、何を守ろうとしているのか。
私は本当は、何を大切にしたいのか。
この違和感は、個人的なものなのか、それとも社会の構造にも関係しているのか。

時間がない場合は、
とりあえず、携帯でも手帳にでも、メモしておくのがいいです。
自分のための記録です。
どんどん貯まると、何かの折に、ずいぶん前の違和感と同じ現象であることがわかったり、
解決のヒントがみつかったりします。

そうやって違和感を蓄積し丁寧に見つめることで、時に違和感は問いに変わります。

たとえば、
「なぜ私は、この働き方に苦しさを感じるのか」
という違和感は、
「人が自分の感受性を失わずに働ける環境とは何か」
という問いに変わるかもしれません。

「なぜこの空間では、人が人に気づきにくいのか」
という違和感は、
「人が自然に他者へ意識を向けられる環境はどう設計できるのか」
という問いに変わるかもしれません。

「なぜ真珠は古い上品さの記号として見られてしまうのか」
という違和感は、
「真珠は現代の美意識をどう象徴できるのか」
という問いに変わるかもしれません。

違和感は、問いの入口です。
そして問いは、創造や社会実装の出発点になります。

違和感を言葉にすることは、自分の軸を取り戻すこと

違和感は、最初からきれいな言葉にはなりません。

むしろ、最初は曖昧です。
もやもやしている。
断片的である。
説明しようとすると、うまくまとまらない。
感情的に見えてしまうこともある。

けれど、その曖昧さをすぐに否定しなくていいのだと思います。

とりあえず、記録です。

まずは、言葉にしてみる。
書き出してみる。
なぜそう感じたのかを考えてみる。
そこにある願いや価値観を探してみる。

そうすることで、違和感は少しずつ輪郭を持ち始めます。

「私は本当は、こういうことを大切にしたかったのだ」
「私はこの部分に、ずっと苦しさを感じていたのだ」
「私はこの感覚を、なかったことにしたくなかったのだ」

そう気づくことは、自分の軸を取り戻すことでもあります。

違和感を言葉にすることは、自分の感受性を信頼し直すことなのだと思います。

違和感は、創造の出発点になる

創造は、いつも美しい理想からだけ始まるわけではありません。

むしろ、
「なぜこうなのだろう」
「このままでいいのだろうか」
「もっと違う形があるのではないか」
という違和感から始まることも多いと思います。

ジュエリーデザインでも同じです。

既存の美しさに対して、どこか物足りなさを感じる。
ある形に、まだ言葉にならない可能性を感じる。
今の表現では、人の心に届ききっていないと思う。
もっと静かで、もっと深く、もっとその人の内側に触れるものがあるのではないかと思う。
心が動く瞬間にも、動かない瞬間にも理由があり、
それをよく分析することでしか、わからない部分があるのです。

そうした違和感が、新しい表現の入口になることがあります。

違和感は、壊すためだけの感覚ではありません。
よりよい形を探すための感覚です。

今あるものを否定するためではなく、
その奥にある本質を見つけ直すためのもの。

だからこそ、違和感は創造の源になるのだと思います。

違和感を大切にする人は、他者の違和感にも気づける

自分の違和感を大切にすることは、自分勝手になることではありません。

むしろ、自分の中にある小さな引っかかりを丁寧に扱える人は、
他者の中にある言葉にならない違和感にも、想像を向けやすくなるのではないでしょうか。

人はそれぞれ、違う感覚を持っています。
同じ場所にいても、感じていることは違います。
同じ言葉を聞いても、受け取り方は違います。

だから、自分の違和感だけが正しいわけではありません。
けれど、自分の違和感を押し殺す必要もありません。

大切なのは、違和感を出発点にして、問いを開くことです。

私はなぜそう感じたのか。
相手はどう感じているのか。
この場には、どんな見えない前提があるのか。
誰かが言葉にできないまま抱えている不自由はないのか。

そう考えることで、違和感は対立ではなく、対話の入口になります。

違和感を大切にすることは、感受性を社会にひらくこと

私が探究している問いは、
感受性が高まると、人は幸せになれるのか
ということです。

その中で、違和感はとても重要な感覚です。

なぜなら、違和感は、自分の感受性が働いている証だからです。

何かを美しいと感じること。
何かに惹かれること。
何かに心が動くこと。
それと同じように、
何かに引っかかること。
何かに苦しさを感じること。
何かをこのままにしたくないと思うこと。

それもまた、感受性の働きです。

違和感を見過ごさず、問いに変え、言葉にし、形にしていく。
その積み重ねが、個人の内面を深めるだけでなく、社会への提案にもつながっていきます。

感受性を社会にひらくとは、
美しいものを語ることだけではありません。

違和感を大切にし、そこから新しい問いを育てることでもあるのです。

まず、自分の違和感を信じてみる

違和感は、すぐに答えをくれるものではありません。

ときには曖昧で、扱いにくく、言葉にしづらいものです。
けれど、その奥には、自分が本当に大切にしているものが眠っていることがあります。

だから私は、これからも違和感をより大切にしたい。

違和感を、なかったことにしない。
感情的な不満で終わらせない。
誰かを責めるためだけに使わない。
自分の深層心理からのサインとして受け取り、問いに変えていく。

その姿勢は、TCLでの大きな学びのひとつでした。

違和感は、弱さではありません。
違和感は、感受性が働いている証です。

そしてその違和感は、
自分自身を知る入口になり、
創造の源になり、
社会を少し変えるための問いにもなります。

まずは、自分の中に生まれた小さな違和感を何かのヒントだと思い、書き留めること。

そこから、学びも、表現も、社会実装も始まっていくのだと思います。

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この記事を書いた人

ジュエリーデザイナー26年
ジュエリー職人4年 CAD1年
ジュエリーブランドディレクター10年
製作が好きで飛び込んだジュエリー業界で様々な経験を積みながら
品があるデザイン、上質といえる技術を模索。
”静寂なる輝き”を極める旅を続けています。

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